ノマドワーカーに憧れて

僕は子供の頃から海外に興味があって、たくさんの国を旅行するのが夢だ。幸い数カ国を旅したり、アメリカに住んだりできたけど、まだまだ全然足りない。もっといろんな国々を周り、いろんな人と会って、地球を見尽くして死ぬのが人生の目的だと断言できる。

デザインの仕事なら、作業できる場所さえあれば、どこでも仕事ができる。ということは、いろんな場所を巡りながら仕事をすることも可能なわけだ。


ちまたではそれをノマドワーカー」というらしい。


その響き、最高すぎる。いつか絶対ノマドワーカーになってやると思った。

しかし結局のところ、勤めている会社で朝から終電まで仕事に明け暮れる日々。それはそれで充実していたし、楽しかった。しかし自分の中で「将来こんなふうになってたい自分」がくすぶり続けてたのも事実。でも順調だったので、「現状維持」という枠の中から出ることができなかった。

しかしついにそのきっかけはきた。

リーマンショック」である。

米国初の大恐慌で、順調だった会社の業績は一気にダウン。働けど働けど、目標を達成できないスパイラルに陥り、「このままじゃマズいな」という思いが自分にのしかかるとともに、心の中に封印されていた「将来こんなふうになってたい自分」が、ここぞとばかりに強行突破してきた。

そしてとどめは、2009年あたりから急速に広まっていったクラウドという、データをすべてサーバ上(雲の上)に上げて、ネット環境があれば、どこでも仕事ができるという素晴らしい技術を知ってしまったこと。更には電子書籍という本棚丸ごと1つのガジェットに入れて持ち運べるこれまた素晴らしいものが出てしまったこと。

要するに、難しい知識も技術も、さらにはコストも大してかけずに、今すぐに「ノマドワーカー」になれてしまうんだな。


会社 → ここにとどまっていても、(自分にとっての)明るい将来はないっぽい。
自分 → 激務に疲れきり、体を崩し気味。そもそも集団行動苦手。
社会 → フリー or 少人数でも働けるインフラが急速に整う。


もう迷いはなかった。
すぐに家族に意向を伝えて了承をとり、会社に辞める旨を伝える。

そして2010年4月、念願のフリーランスになることができた。僕の人生はここからまた始まる。ついにスタートラインに立てたのだ…と朝焼けを見つめながら、浸っていたのはここだけの話。

会社というでかい船を離れ、手漕ぎボートで大海原へいざゆかんなう。


一応、前に勤めていた会社が悪いわけではないということを補足しておこう。いい会社だったし、一緒に働いているメンバーも好きだった。ただまわりの状況が、自分の夢を後押ししただけの話である。